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2015年2月22日 (日)

松尾義之『日本語の科学が世界を変える』(筑摩選書)

松尾義之『日本語の科学が世界を変える』(筑摩選書)

日曜日の今日は、久しぶりにイスラームから離れた本を読んだ。著者の松尾義之氏は、『日経サイエンス』や『Nature ダイジェスト』の編集に長く携わってきた科学ジャーナリスト。

非英語圏で主に母国語によって科学の最先端で思考しノーベル賞級の独創的な成果を出していける国というのはそんなに多くはない。日本はその数少ない国のひとつであるが、それは江戸時代の蘭学以来、日本語によって近代西洋科学の概念や思考法、専門用語を日本語で翻訳し表現できるシステムを営々と築いてきたからだ、そして西洋文化とは違う伝統と文脈から発想できるというメリットもある、という筆者の主張は、まぁ、たしかにそうなんだろうなとは思う。でも、作られたシステムに安住してたらいい研究はできないだろうな。

社会科学でも人文学でも同じような事情はあると思うが、私は、そのシステムが作られていく場、あるいは更新されていく場の方に興味がある。英国留学帰りの夏目漱石がたとえば「文学論」を書いていた時に、彼の頭のなかでは英語と日本語が入り混じり、なんだかもの狂おしいくらい思念が火花を散らしていたんじゃないかな。湯川秀樹が英語で思考して中間子理論を思いついたとは思えないが、かといって日本語だけでそこに辿り着けたのかも疑問だ。私の頭はそんなに高級ではないけれど、日本語だけで考えるよりも外国語も絡めてああじゃこうじゃと思い悩んでいる方がなんだか脳の血管の通りが良くなる(笑)ような気がする。

それにしても、私の息子たちはふたりとも理工系だが、英語がほんとうに苦手である。長男が学会で研究成果を英語で発表するという時に、私も心配で原稿を見せてもらった。すると構文は実にシンプルで明快。とてもわかりやすかった。でも、その内容はまったくちんぷんかんぷん。まぁ、これでいいのかな。

【要訂正】
p.115で、物理学者の石原純博士の「純」のふりがなが「じゅん」になっていた。これは「あつし」が正しい。学生時代に指導教授にしっかり訂正されたのでこれはよく覚えている。

この石原博士は留学してアインシュタインに師事し、日本に相対性理論を紹介した物理学者。と同時に、伊藤左千夫に師事したアララギ派の俳人で、妻子がありながら女流歌人の原阿佐緒と恋愛事件を起こしたりしている。彼の書いた科学の啓蒙書もかなりの影響力があり、小林秀雄も初期の批評で引用したりしていた。

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